2025年度(令和7年度)大学入学共通テスト「情報Ⅰ」の解説を行います。
第1問(20点満点)
問1 ネットワークの知識を問う問題です。こういうのは20年前からありました。2003年ぐらいの情報処理技術者試験の午前問題にも出ていて何を今更感が半端ないですが、逆に高校3年生だと2003年にはまだ生まれていないのでかえって当たり前すぎていちいち意識していない人もいるかもしれません。
デジタル署名はなりすましの防止だから近いのはアは②の改竄、2003年を「近年」と言い切る出題者に脱帽ですがIPアドレスの枯渇に対応するのであればイは②機器の増加です。
問2 LED電球やエラーコードなど一見コンピュータの問題に思えますがどう見ても数学Ⅰや数学Aの教科書にありそうな問題です。ウエオは2の7乗だから127通り、カは3個なら8*5*1=400通り、4個ならさらに10倍で4000通り、これではまだ5000通りには足りないので5個ならさらに10倍で40000通り、LEDもったいない気もしますが5000通りという仕様に適合はします。
問3 こちらもチェックディジット等コンピュータの問題に思えますがどう見ても数学というか、小学校の算数レベルの問題です。計算の工夫としては2桁になったらすぐ10で割る(下一桁のみ残す)ことでしょうか。キは6+2+8+0+7のさらに下一桁で3、それを10から引けば7です。クは①と③が紛らわしいですが、合計値が同じだとチェックディジットの意味がなくなるということでいえば③が正解です。
問4 ツインディスプレイだと思いっきりこの問題の仕様に合ってないんですが、シングルディスプレイという体で書いてあるものと思いたいです。さらにいうとマウスではなくキーボードのタブで遷移するのが使いやすいソフトウェアだと思うんですが、あくまでもシングルディスプレイかつマウスだけと使うという微妙なUIを設計するという問題です。ケは、普通に考えると①と②が同じぐらいの距離にありますが、「端にある対象物は大きさを無限大とする」という記述を本気にすれば②となります。コとサは⓪使用頻度が低いから①遠い場所となります。
第2問(30点満点)
A プログラミングではなく、初級システムアドミニストレータ(現在のITパスポートに近い)の問題にありそうな内容です。コンピュータの問題というより国語の問題に近いです。自分が小売店で働く人の立場にたって、顧客や仕入れ先(設問では高校生への配慮なのかメーカーとなっているが、実際は商社や問屋であることが多い)との連絡をするとしたらどういうデータが必要かを考えれば良いのですが、社会人経験のない高校生にはイメージが沸きにくいのではないでしょうか。
B お釣りを用意するという内容ですが、アルゴリズムや同じことを何度も繰り返すシミュレーション等、プログラミング的な考え方を問う問題です。プログラミングをしたことがない人には乱数というのが分かりにくいかと思います。文章中に「表計算ソフト」とあるので、この部員MさんはExcelでこのような表を作ったのでしょう。

1人目の行に左から順に
=INT(RAND() * 10) + 1
=IF($B3 >= 4, C2 + 1, C2)
=IF($B3 <= 3, D2 + 6, D2)
と入力し、後はドラッグすれば上記の表のようになります。
なお、この部員Mさんはこのシミュレーションを1万回行ったと記載がありますが、まさかExcelでB列の再読込を1万回行ったとは思えず、何らかのプログラミング言語(例えばPython等)で同じ処理を1万回繰り返した統計値を配列などで保持し、Matplotlibでヒストグラムを描画したと考えられます。
問1
第3問(25点満点) アルゴリズムを問う問題です。特定のプログラミング言語ではなく疑似言語を使っています。コードの穴埋めと実行過程が問われています。なお、設問の疑似言語をPython、C言語、JavaScriptに移植したのが前回エントリです。これらPG言語では配列の添え字は0から始まるのですが、設問のように疑似言語では1から始まる場合もあります。
第4問(25点満点) コンピュータの問題ではなく、数学Ⅰの教科書第5章データの分析の問題です。ただし知識として、統計局公式サイトにある4つの尺度水準「名義尺度、順序尺度、間隔尺度、比尺度」を知っている必要があります。これは高校の情報Ⅰの教科書に書いてあるのでしょうか。